患者さんが亡くなった後のご家族との関わり、また職員の喪失感への取りくみなど、当法人で模索しつつ行っている実践の一部を支援者向けにご紹介しています。
私たちの活動もまだまだ不十分。だからこそ、グリーフを抱える人を支えるために一緒に考える仲間をつくりたい。皆様の想いや悩み、実践も共有する場を設けていきます。
医療法人稲生会連絡先
代表電話:011-685-2799
代表メールアドレス(「グリーフについて」などの件名を入れてください)
toseikai@kjnet.onmicrosoft.com
Ⅰ.私たちの想い
ご遺族の悲しみをただ見ているのは辛い。
でもどのような言葉をかければいいのかわからない。
そんな私達に、亡くなったお子さんのお母さんがこう声を掛けてくれました。
「みなさんも一緒に悲しんでくれていることを知っただけで、嬉しかったです。」
その言葉に、逆に私達が救われました。
同時に、グリーフに対しても「アセスメント」をし、「ケア」を提供せねばという気持ちがあったことにも気づかされました。
もうサービス提供者と利用者の関係ではありません。
グリーフは「治療」できるものでもありません。
医療や福祉に携わる者として全力で患者さんに向き合い、お見送りをしたあとは、ご遺族と等しい関係を持つ人同士としてどのような関わりができるのか。また、そこから遡って患者さんとしての関わりの中で「等しい関係」が構築されているのか。
そんな問いとも向き合うことにもなりました。
また、医療、介護、保育、教育に携わり、担当していたお子さんを亡くした経験のある方もいらっしゃるかもしれません。担当していた子が亡くなったときに、その喪失感を表出する環境がない場合もあるかもしれません。個人としての想いをどうやって表現できるだろう。そんなことも一緒に考えることができればと思っています。
Ⅱ.私たちの実践
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1.ご遺族との関わり
①訪問:可能であれば、お看取りの後ご自宅へ、そしてお通夜やお葬式などに参列させていただいています。翌年以降も可能であれば命日前後にご家族を訪問させて頂いています。プリザーブドフラワー(娘さんを看取った方が作成している心のこもったアレンジメント)を持参することもあります。
②天使カードの送付:命日には、手作りのカード(患者さんのご家族にお願いしています)にご家族へのメッセージを添えています。
③ぴあサロン@みらいの主催:娘さんを看取ったお母様がグリーフケアアドバイザーの資格を取り、同じような立場の方とお話する場所を設けてくれています。法人からは、活動場所の提供、運営費などの形で援助をしています。
(ぴあサロン@みらいチラシ)
④天使カフェの開催協力:上記「ぴあサロン」の主宰者が一年に一度、「天使の日(10月4日)」に行う、グループでのピアサポートの会です。過去の開催の記録はこちら
⑥定例天使カフェの開催:2023年6月からはじまった、「天使の日(14日)」に行う、グループでのピアサポートの会です。*月命日などで参加できない、というお声があったため2024年以降は「14日」にこだわらず開催しています。予約不要の会で、アロマやフラワーアレンジ、お菓子作りなど五感を使いながら、気の向くままにおしゃべりする時間です。
(定例天使カフェ)
2.ご遺族、職員が「ともに」行なっている取り組み
①みらいつくり食堂:「大切な人をなくした。もう、生きていけないと思った。でも、お腹はすいた」。「グリーフを抱える人の当事者研究」の中で話されたことを元に、「食べよう、そして生きよう」をコンセプトにした食堂を運営しています。職員や患者さん、そのご家族や、地域の方などがともに料理をし、ともに食事をする場になっています。
②当事者研究:死別によるグリーフを抱えた当事者が集まり、自分たちの困難を研究し、またその情報を提供することを目的に開催しています。
③研究発表:グリーフサポートに寄与するために、ご遺族と共に研究発表を行いました。
「子を亡くされた家族と医療者の関係継続によるグリーフへの影響」(2016年渓仁会グループ発表会)、「子を亡くした母親に対するピアサポートの効果の検証」(2017年渓仁会グループ発表会)
④Caféです。:死や喪失をタブー視せず、そこから生について話せる風土の醸成を期待して開始した、途中参加も退出もOKのカジュアルな会です。みらいつくり食堂でおいしいものや地域の方が入れてくれるコーヒーを楽しみながらおしゃべりしています。
⑤書籍紹介
「子どものグリーフを支えるワークブック―場づくりに向けて | 子どもグリーフサポートステーション」 高橋 聡美
「はじめて学ぶグリーフケア」宮林 幸江 、関本 昭治
(随時追加中:お勧めがありましたらぜひお知らせください。)
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3.職員に対する取り組み
①勉強会:ご遺族でもあるグリーフケアアドバイザーにお越し頂き、職員対象に勉強会を実施しています。
②ギフトカンファレンス:一般的にデスカンファと呼ばれている、患者さんがお亡くなりになった後の振り返りの会です。医療方針や連携体制などを振り返ると同時に、その方の想い出話などをすることで、教えてくれたことや存在に感謝しつつ携わった職員自身のグリーフを表出できる機会としています。
③ナラティブセッション:ACP(アドバンスドケアプランニング:今後の治療・療養について患者・家族と医療従事者があらかじめ話し合うプロセス)の今後のあり方について、ひろく話し合う会を設けています。
④Loss語り:他者のグリーフに向き合うためには、自分自身の喪失経験やグリーフを覚知していることも大事になってきます。ワークショップの形で、自分の経験を振り返る機会をつくります。
⑤連携:グリーフサポート団体と連携をとり、積極的に勉強会に参加したりすることで情報収集や情報交換に努めています。